坂本竜馬暗殺の黒幕

昨夜、観たNHKの「その時、歴史が動いた」(坂本龍馬暗殺の黒幕は誰か?)は見ごたえのある番組だった。しかも、双方向企画になっていて、幕府黒幕説と薩摩藩黒幕説のどちらがより説得力があるかを視聴者が携帯電話と地上デジタルテレビで投票するという仕掛けになっている。僕は薩摩藩黒幕説に投票したが、視聴者の過半数も同じ判断だった。
薩摩藩黒幕説の根拠は、あくまで武力で政権交代を図ろうとする薩摩藩にとって、平和的な政権交代を画策し、薩摩藩の先手を打って、幕府に「大政奉還」を実現させた坂本竜馬が次第に邪魔な存在になっていったというものである。
幕末期の日本史を勉強していて、大政奉還が実現したのに鳥羽伏見の戦いが起きるのは不自然だと感じていたが、その背後にあくまで武力による政権交代を図る薩摩藩と平和的解決を図る坂本竜馬との熾烈な闘いがあったということが分かるとすんなり理解できる。
それにしても、番組を見終わって感じるのは西郷隆盛という人物の底知れぬスケールの大きさである。坂本竜馬の仲介により薩長連合を実現させてもらいながら、武力による政権交代を実現しなければ新しい時代は来ないという信念の下にかつての盟友までも暗殺してしまう冷酷さ。
そして、明治維新成立後、自分の創った政権が自分の理想とほど遠いと悟ったとき、また、新しい時代にとって自分を象徴とする旧士族が邪魔だと悟ったとき、西南戦争の勃発を容認して自分とともに守旧派を政治の舞台から消していくというのは想像を超える行動である。
並外れた構想力と行動力で新しい時代を切り拓いた坂本竜馬と共に西郷が愛する「敬天愛人」という言葉そのままに生きた西郷隆盛が愛され続ける理由がよく分かる。