米国の中間選挙結果が示すもの

もう先週のことになるが、米国の中間選挙で野党の民主党が圧勝して、上下両院の過半数を制した。ブッシュ政権の敗因、そして民主党の勝因は、すでに多くのメディアで指摘されているように、泥沼化しつつあるイラク戦争に多くの国民が辟易(へきえき)していることである。

「世界の常識」から見れば、今回の中間選挙民主党が勝ったのは当然だし、もし、民主党が勝っていなかったら、いよいよアメリカはおかしくなっているのではないかと深刻に国際社会のアメリカ離れが始まっていただろう。というのは、2年前の大統領選挙の時に、すでに、イラク戦争を始める大義であった大量破壊兵器が実はなかったという事実が明らかになっていたので、民主党のケリー上院議員が勝っていてもおかしくなかったからである。

民主党は、当面、ブッシュ政権イラク政策の失敗を挙げて政権を攻撃していくだろうが、本当に大事なのは、2年後の大統領選挙の争点を何にするかである。イラク戦争大義なき戦いであるのはすでに明らかであり、米軍が撤退するのは単に早いか遅いかという時間の問題なので、大した争点にはならない。では、2年後の大統領選挙の争点が何になるかというと、僕はずばり「格差問題」だと思う。

アメリカの建国以来の歴史をふり返ると、基本的には、アメリカは自由の国であり、経済運営も政府が市場に干渉しない自由放任(レッセフェール)が基調であり、共和党が推進する自由放任の経済政策がある程度続くと、必ず、国民の間で所得格差が顕在化してくる。そうすると、平等というもう一つの理念を掲げる民主党が政権を奪い返すという繰り返しが何十年単位で行われ続けている。

1992年に民主党クリントン政権が誕生したのは、簡単に言うと、80年代のレーガン政権時代に推進された規制緩和の結果、国民間の所得格差が政治的限界を超えて顕在化したためである。レーガン時代にすでに格差問題は明らかになりつつあったが、何しろレーガン政権は冷戦に勝利した政権であるので、次のブッシュ政権(現在のブッシュ大統領の父親)につなぐことができたのであろう。

現在のブッシュ政権の下では、イラク戦争の失敗があるうえに、急速に進行するグローバリゼーションの中でこれまで以上に拡大している国民間の所得格差の問題がある。これが、2年後の大統領選挙で格差問題が大きな争点になると僕が考える根拠である。

もっとも、グローバリゼーションの中で進む格差問題は、アメリカに限った話ではない。グローバリゼーションが進行する中で、グローバル化の波に直撃されて、日々、経営が苦しくなっていることを実感しているのは、地方の中小零細企業の経営者であり、地方に住む我々、地方住民である。ヨーロッパにおいても、日本においても、現下の、そして、ここ十数年は政治的に最も大きな問題になろう。

正直なところ、この問題に取り組むために、僕は故郷に帰って来たような気がしている。3年前の福井県知事選挙のときに知事候補として提案した「田園知識圏構想」はそうした問題意識がベースになっている。ここでその問題を議論し始めると、話が終わらなくなるので、機会を見ながら、追々、僕の考えを述べていきたい。