9月議会の総括

 昨日で9月議会が終わった。ここで簡単に9月議会を総括をしておこう。

 まず、政務調査費条例の改正である。この改正で、1円以上のすべての領収書を収支報告書に添付することが義務付けられることになった。6月議会の議員政治倫理条例に続いて、議員が襟を正すという姿勢を明確に示した。また、来年度4月から一般競争入札の入札対象を250万円以上に拡大することにしたのも大きい。現在の7000万円以上を250万円以上に拡大することで、談合が行われる余地が大幅に減った。

 つまり、議員政治倫理条例、政務調査費の使途の全面公開、入札改革の3点セットで、「政治とカネ」に絡む問題に一通り目途をつけたことになる。

 もう一つの9月議会の柱は、議員提案条例の取り扱いであった。議員提案条例については、「森づくり条例」(県民連合提案)、「地産地消条例」(自民党新政会提案)など2つの条例案が上程されたが、いずれも継続審議となった。議員提案条例については、理事者側(県庁サイド)の猛烈な巻き返しがあった。理事者側の姿勢は、議員政治倫理条例や政務調査費条例など、もっぱら議員を対象とする条例については、「どうぞ、ご勝手に」と静観の構えである。しかし、これが一旦、政策に関わる条例になると、「政策づくりは行政の専管事項である」と言わんばかりに猛烈に反発する。

 さすがに、そう表向きは言えないので、「手続きに瑕疵がある」という言い方になる。確かに、三重県宮城県などの先進県では、パブリックコメントを求めるなどのきちんとした手続きを踏んだうえで議員提案条例を成立させている。しかし、現在の福井県議会にこうした完璧な対応を求めるのは無理であろう。

 現在の福井県議会の状況を説明するとこういうことである。今年の6月議会中に最大会派である自民党新政会が分裂するまでは、理事者の基本姿勢はなるべく議員に仕事をさせないでおこうというものであり、議員側も立法という本来の仕事をしなくても議員が務まるので、これに甘んじるというものであった。また、議員の生活設計もこうした暗黙の了解の下に立てられていた。

 ところが、自民党新政会が分裂したことで、まず、長老の重しが取れた自民党青年将校たちが、かねてより念願であった議員提案条例をどんどん発議する状況が生まれた。また、これに呼応して、いままで最大会派に黙殺されてきた県民連合も議員提案条例を発議するようになった。

 こうした状況に困ったのが理事者である。当初は、政策に関する議員提案条例は一切ご法度という姿勢であった。それが無理ということが分かると、今度はきちんとした手続きを踏んで欲しいという姿勢に軟化した。しかし、その心は、どうせそんなきちんとした手続きは踏めるはずがないというものである。

 実際、現在の福井県議会では困難であろう。なぜなら、家業の傍ら議員をやっているという議員の方が多くて、議会閉会中は議員の頭数がそろわない。議会開会中ですら、議員が一同に会するのはたった5日間で、30分の予定を入れるのも一苦労である。こんな状況で、一つの条例案を作るまでに複数の議員が何度か集まるということがそもそも困難なのである。読者にとっては、驚いた話であろう。正直言って、僕も驚いているが、これが実情なのである。理事者が議員提案条例に抵抗するのも無理がない。

 しかし、である。だから、議員提案条例は止めておこうとなったら、困るのである。政治の貧困とこれと表裏一体の官僚政治がいつまでも続くことになる。話が長くなって恐縮だが、要するに何を言いたいかというと、議員提案条例については、9月議会は過渡期であったということである。過渡期は9月議会だけでなく、しばらく続くであろう。

 そうは言っても、政務調査費については、すべての会派よりなる検討委員会が作られ、そこで何度かの検討の末に、皆が納得する条例改正について合意が成立した。これまでの福井県議会からすれば立派なものである。

 読者の方からすれば、お粗末極まりないということになろうが、議会の本来の姿に向けて、遅々たる歩みであるが、一歩一歩、着実に進んでいるとご理解いただきたい。