上海

 先週の木曜日から昨日まで4泊5日で上海に行って来た。上海は2度目である。前回は、4年前にどうしても中国を見るべきだという知人に連れられて、西安、南京、揚州、上海と回った。今回は、福井県が、いや日本が、急成長する中国とどう付き合っていくべきかを考えるために訪れた。

 感想は、「いやはや恐れ入りました」ということである。何に恐れ入ったかというと、まず、その開放的なエネルギーだ。日本のバブル時代のような底抜けに明るい活気が街中にあふれている。バブルと違うのは、上海の好況が中国経済の成長に裏付けされていることだ。

 ここで経済成長のメカニズムを長々と説明している余裕はないが、簡単に言うと、生産の拡大が消費の拡大を生み、消費の拡大が生産の拡大を生むような好循環である。実際、上海のデパートに行っても、置いてある商品は日本とまったく変わらない。それどころか、モールの中にあるユニクロに行ったら、日本のユニクロよりも品揃えが豊富な上にお洒落であった。しかも、中国の若者たちがどんどん買っている。中国にはすでに巨大な市場が存在しているのである。

 そして、この巨大な市場に売り込むべく、いまや世界中からありとあらゆるビジネスが進出している。日本からも考えられるビジネスはほとんど進出しているのではないか。街を歩いているだけで、日本レストランは言うに及ばず、居酒屋、焼き肉屋、焼き鳥屋、ラーメン屋、美容室、クラブの看板が次々と目に飛び込んでくる。最近、福井でもあちこちで見かける大衆食堂の「ごはん屋」まであるのには驚いた。

 日本にいると、中国の経済成長は早晩、壁にぶつかるというような報道をよく目にするが、それは希望的観測というものだろう。経済成長の壁になるのは、多くの場合、労働賃金の上昇である。確かに、最近、中国の労働賃金は上昇気味であるが、中国内部にはまだまだ無限といえるほどの安い労働力が控えている。また、土地も広大である。資本や技術は外国企業がただで持ち込んでくれるので、豊富で安い労働力と広大な土地がある限り、中国経済にはまだまだ成長の余地がある。

 中国政府の壮大な戦略にもうならされる。上海から80キロほど離れた蘇州工業園区を訪れると、そのスケールの大きさに圧倒される。物理的なスケールもさることながら、知的スケール、すなわち、グランドデザインが素晴らしい。訒小平シンガポールのリークワンユー首相の合意により、中国政府とシンガポール政府が共同で建設中のこの工業園区は工業団地というよりも、シンガポールをもう一つ中国の中に作っていると言った方が正確である。

 80平方キロの更地に描かれたマスタープランはシンガポールを建設した経験を十分生かしたもので、そのコンセプトは、ハイテクの基地であり、かつ、住み心地の良い国際的な田園都市を創るというものだ。金鶏湖の周りにはお洒落なレストランとお店が建ち並び、ゴルフコースもある。金鶏という名を冠した国際的な映画祭の舞台となる5つ星のホテルもある。蘇州市の市役所支店では、電話、水道、ガス、旅券、自動車免許、医療保険などのあらゆる行政手続きを一箇所でできるワンストップサービスを受けることができる。英語と中国語で学べる国際学校もあれば、イギリス、アメリカ、シンガポール、香港、中国の有名大学も進出している。

 これはもう工業団地というよりも、街である。実際、現在の人口がすでに45万人であり、目標は60万人であるという。そして、この蘇州工業園区と上海をつなぐのは新幹線であり、約30分で着いてしまう。ちなみに、上海空港から中心市街地までは時速500キロで飛ばすリニアモーターカーで約5分であった。

 これを「恐れ入りました」と言わずに何と言おうか。中国恐るべしである。