中国の大地震

 中国で大地震が起きたようだ。9600人超の死亡者が出て、被害はさらに広がると報じられているから、かなり大規模な災害だ。

 中国にいる知人からの連絡によると、現時点では報道管制が敷かれているようだが、これだけの大規模災害を隠し遂せるものではないし、また、そうすべきでもない。一刻も早く、被害状況を明らかにして、国際社会から差し伸べられる支援は素直に受け取るべきだろう。

 僕自身の経験では、大災害に会うと、国家首脳の考え方はオープンな方向に変わる。

 1985年にチェルノブイリ原発事故が起きたとき、僕は外務省の邦人保護課の首席事務官をしていた。日本の家族からの電話でパニック状況に陥っているソ連及び東欧在住の日本人を保護するために様々な措置を講じようとしたが、果たして秘密主義のソ連当局が受け入れるかどうか心配だった。

 ところが、ソ連当局自身がどうしていいか分からなかったからであろうか、当局からの介入はまったくなく、必要な措置を講じることができた。

 どうもソ連内部で何かが起きていると思って見ていたら、まもなく、それまで頓挫していた米国との核軍縮交渉が再開され、さらには、ペレストロイカが進められた。その後のソ連の辿った途はご承知の通りである。

 つまり、自国だけでは対処することができない大災害に遭遇すると、自分たちだけでは何もできないことを思い知り、また、国際社会から差し伸べられる支援の有難さも身に沁みるということだろうか。

 中国は経済をオープンにしてから急成長した。中国首脳は非常に柔軟という印象を受けているので、今回の大地震をきっかけに、経済以外の分野でもオープンな体制になっていくのかも知れない。