最高裁判決の意味

 最高裁が珍しく違憲判決を出した。違憲判決というのは、国会が通した法律が憲法違反だという判決である。最高裁が「第二の立法府」と考えられているアメリカでは違憲判決は当たり前だが、政府による明らかな憲法違反を「統治行為」に司法は介入しないという言い訳で逃げるのが当たり前になっている日本の最高裁では異例のことである。戦後八件目とのことだ。
 判決の中身は、日本人男性がフィリピン人女性に産ませて、自分の子だと認知した子供には、両親が結婚していなくても、それ以外の国籍取得のための要件を満たしていれば、日本国籍を与えるというものである。
 判決理由として、「家族生活や親子関係に関する意識が変化し、実態も多様化したことを考えると、両親の結婚を国籍取得要件にしている国籍法の規定は不合理な差別であり、憲法違反である」と述べている。
 国籍法は、日本人になるための資格を定めている法律である。国籍を取得する方法には、大きく分けて、その国で生まれれば誰でも自動的にその国の国籍を取得できる出生主義と、その国の国籍を持つ人間との血統的なつながりを重視する血統主義の2種類がある。
 出生主義の代表例は、アメリカであり、アメリカで生まれた人間は誰でもアメリカ人になれる。日本は血統主義であり、父親か母親が日本人でなければならない上に、生まれた子供が10年以上日本に住んでいる必要がある。さらに、これまでは父親が日本人で母親が外国人の場合には、その2人が結婚している必要があったわけだ。要するに、日本人になるのは大変なのである。日本人には分からないが、国籍法を見ても、日本は恐ろしく閉鎖的な国なのである。
 僕の第一印象は、最高裁もようやく反省したのかなというものである。反省というのは、昨年のブルドックソース判決に対する反省である。ブルドックソース判決というのは、米系投資ファンドスティール・パートナーズ・ジャパンに買収されそうになったブルドック・ソースが発動した買収防衛策を適法と認めた判決である。
 詳しい説明は避けるが、この判決は世界の投資家のブーイングを受け、日本は資本主義のルールが通じないおかしな国であるということになった。世界同時株安の中でも、特に日本株が外国人投資家に売られるようになった大きな原因である。
 グローバル経済で成功する秘訣は、とにかく、人と金を世界中から集めることである。アメリカにしても、中国にしても、そうやって、経済を成長させている。訒小平が言ったように、黒猫でも白猫でもネズミを取る猫がいい猫なのである。
 ブルドックソース判決で、世界から金を集めにくくしたことをようやく反省した最高裁が、なるべく人を集めやすいように国籍法の違憲判決を出したと考えるのは穿ち過ぎであろうか。